去る、3月16日(水)、すすき野団地の萬駄屋さんによる販売にて、あおばーエル協力店では初めてとなる「当事者リポーター活動」を行いましたので、その様子をご紹介いたします。
障害のある方がお店を利用する際の難しさが具体的に理解できたと同時に、コロナ禍ならではの対応のむずしさも浮かび上がりました。どんなお店の方でも直面する問題も多いと感じましたので、今回の内容を是非ご参照いただければと思います。
★萬駄屋のキッチンカー販売について★
リポーター活動の紹介の前に、萬駄屋がどのような販売形態で普段営業されているのかをご紹介する必要があります。
それはズバリ!キッチンカーによる販売です。

駅から遠いところをめがけて、青葉区内の「これは!」というこだわりの商品を販売するだけでなく、商品と同時に区内の情報をお届けし、駅から遠いところに住まわれている方でも、素敵な青葉区ライフを送ってほしい!という、熱い思いがいっぱいのキッチンカー販売です。
★メニューの見やすさはばっちり!★

目線の高さに合わせて、2か所にメニューが掲示されており、車いすの方でもばっちり見やすい位置に。車いすのMさんからも「見やすいです!」との評価をいただきました。
車いすの方に限らず、目線の位置が低い、小さなお子さんにも優しいですね!
★支払い時の難しさがいろいろ明らかに…★
カウンターの高さが…
支払い時にお金を出そうとしましたが、カウンターの位置が高いので、ちょっと苦労されていました。キッチンカーの構造上、修正が難しそうですが、何か良い工夫があるとよいのですが…。人手に余裕があるときには、他のスタッフによるお手伝いも有効ですね。
店員さんに財布をお預けして支払いをお願いしますが…
Mさんは、手が少し不自由で、こまかいものをつまんだりするのが難しい方でした。そこで、いつもはお財布を店員さんにお預けして、店員さんに支払いをお願いするということにしているそうです。今回も同じようにお願いをしてみたのですが…
店員さん:「神奈川県の感染防止対策事業者として、キャッシュレスまたはコイントレイを使うことに取り組んでいまして…」
Mさん:「ああ~そんなんですね…。どうしたらいいかな…?」
店員さん:「今回はご希望通りに対応しますよ」

ということで、今回は並んでいるお客さんもいらっしゃらず、急がなくても大丈夫な状況でしたので、店員さんに支払いをお願いすることができました。
しかし、食品を取り扱うお店ではなかなか難しい場合もあるのかもしれないとこの場面を見ていて思いました。カウンターと作る人が役割分担されているようなお店なら大丈夫そうですが…。

店員さんは、400円を受け取ったことをMさんにお見せしてから受け取られていました。
※この後、店員さんは、手洗い・消毒を行い、注文されたコーヒーの抽出をされました。
電子マネーも有効な手段!
今回は現金での決済でしたが、萬駄屋さんはQRコード決済等も利用可能でした。MさんはQRコードに対応する電子マネーがなかったので今回は使いませんでしたが、決済QRコードや読み取り機を届きやすい場所に置くことで、決済が簡単で迅速に行えるだろうと思われました。Mさんも、電子マネーはよく使っているので「使えるとありがたい」というお声をいただきました。
★紙コップの取っ手をどうするか?★
萬駄屋のキッチンカーは、使い捨て食器の使用を前提に営業が許可されているそうです。コーヒーを注文されたMさんですが、紙コップだと持てないので取っ手が欲しいというご要望がありました。
店員さんも「なるほど!」と思ったものの、そのような取っ手のついたものはなかったので、急遽その場で自作しよう!ということで作ってみましたが…

強度が足りないのと、つまむことが難しいということで、少し残念な結果ではありましたが「なんとかしたい!」というその心意気が素敵でした。
最後に Mさんと萬駄屋さんに感想をお伺いしました!
●萬駄屋:Aさん

スパイスアップは、どんな風に楽しくできるか?を考え実行することは得意です(笑)
思い出してみると、実家の母は大きな指の変形があるため、逆に取っ手のあるコップは不得意です。手指の機能も人それぞれ。熱いコーヒーなのか、冷たい飲み物なのか?その時に応じて、飲みたいものや楽しみたいことを共有できる施策を実行していきたいと思います。
今回、Mさんと色々とお話させていただいたことで、安全にドリンクや商品を受け取っていただくための環境について、視野を広げて考える機会となりました。ありがとうございました。
●萬駄屋:Bさん

ちょうどこの日は、中学3年生の娘も手伝いに来てくれていて、事前にこの介助体験会について話してあったので、娘が「キッチンカーの受け渡し口は高すぎて不便そうだね」とか「ちょっと高い位置の商品は、立てておいてあるプライスカードは見えるけど、寝かせておいてあるプライスカードは見えないね」とか気づいたことを言ってくれました。Mさんから今回率直なご意見をいただいて、実際お聞きしないと気づけないことも多かったので、今後は「何が必要か遠慮しないで聞こう」と思いました。当事者さんによってお困りごとはそれぞれ違うと思うので、こちらからも積極的にお声がけしてお伺いしながら必要な対応をしていきたいと思います。お越しくださるみなさんも遠慮なく「これを手伝って欲しい」と声をかけてくださると嬉しいです。
●萬駄屋:Cさん

キッチンカーを始めて5カ月になりますが、衛生面・運用面・コスト面も考えながら、お客様の多様なニーズにすべて応えていく、というのは、営業の現場からするととても大変なことだと実感しています。だからこそ、行き届かないところがあるので、ぜひお客様には遠慮せず聞いてもらえたらと思います。
萬駄屋では、廃棄ロスの観点からも、容器やカトラリーを最小限に抑えていますが、ストローやスプーンもいくつかご用意し、マイカップにも対応しています。また、今回の体験をうけて紙コップホルダーも検討中です。いまの紙コップのサイズに合うものが見つかっていませんが、引き続き模索していきます。食品衛生や感染症対策は、飲食店を営業するうえで必須ですが、萬駄屋としてはその趣旨を十分理解したうえでお客様ごとに臨機応変に対応していきたいと思います。
Mさんは、移動販売でドリンクを買うことも、こういう場に来ることも初めて、とおっしゃっていました。あおばエールの取り組みを通じて、Mさんだけなくたくさんの方がこういう場へ来る機会が増えたらいいと思いますし、萬駄屋としても気軽に来てもらえる場をつくっていきたいと思います。
●今回リポーターとして参加していただいたMさん
皆さんが暖かい雰囲気で、障害者の受入れを考えてもらう取組みはとてもありがたいと感じました。また、購入したコーヒーやクッキーはどれもおいしかったです。今回、お誘いを受けて参加しましたが、自分一人では輪に入りくさを感じて行けないかもしれないと感じました。自家用車を使用しているので、車椅子に乗り降りする広めのスペースや多目的トイレなど外出先に確保されているか確認するようにしています。
●まとめ~事務局から~
今回感じたのは、Mさんのために「なんとかしてみたい」というお気持ちを持ったスタッフばかりで、その姿を見ていて、私自身も勇気づけられました。こんなお店が増えるといいなと思う一方で、せっかくお店の方が努力して多くの方を受け入れる態勢を整えたとしても、障害のある方の利用が増えていかないと、結局元に戻ってしまうかもしれないとも思いました。
たとえ障害があったとしても、お店を利用することで楽しい生活が送れる障害者が増えれば、お店も新しいお客さんが増えて、それだけ利益も上がるわけですので、win-winな取り組みとなるはず!と考えています。青葉区で生活する皆さんが楽しく元気に過ごせるために、障害があっても外出できる人がもっと増えるよう、この取り組みを多くの方に知っていただきたいと改めて感じました。
また、スタッフの感想にもあった通り、障害者と言っても、本当に一人ひとり違います。初めて来店される障害者の方すべてに、完璧な対応をすることは相当難しいことだと思います。専門職であってもそれは同じです。お店のスタッフの方には、むしろ最初から何でも準備して身構えておくというよりは、まずは何を求めているのか、何が困っているのかを聴いてみよう!というところからスタートしていただければと思います。完璧な対応ができなかったとしても、その姿勢からきっとリピートしてくれるお客様になってくれることでしょう。今回、移動に大変な困難があるMさんと、萬駄屋のみなさんにご協力いただき、このような活動の発信ができたこと、大変感謝いたします。